中年独りもん

会社員の男性同性愛者。

LGBT

「昨日いっしょに居酒屋に行った先輩、その人はLGBTだって言ってたけど、自分はそういうのは、気にしないんだ」

 

職場の大きいテーブルでの雑談中、A君がそんなことを言っている。

 

まだ二十歳前のA君。フランケン風の大きいガタイ、ちょっととぼけた感じの優しい男の子だ。

 

上京して、街でいろいろな遊び仲間と知り合い、その中の少し年上の男の子を先輩と呼んているようだった。

 

A君の同期の女の子達が、クスクス笑いながら、A君もLGBTなの?ときくと、「自分は違う、でもLGBTでも気にしない」と答える。

 

こちらをチラチラ見るから、「いいと思うよ、居酒屋でコーラ飲みながら、おいしい物をいっぱい食べなさい」とか言っておく。

 

いいと思うよ、何がいいのか意味不明だが、女の子達も、そこにいた皆が、「ビール、だめー」とまだ未成年のA君を指さして、からかいながら笑う。

 

あの人はLGBTだ、この頃はそういう言い方するの?と、40代半ばの自分はふと、頭の中でそこにいる皆とズレたことを考えていた。

 

今どきは、高校でLGBTについて、とか、そういったことも習うのかな、いや、その先輩という本人が、俺はLGBTなんだ、そう言ったのかもしれない。

 

まあ、A君が言葉の使い方を間違えているだけ、という可能性も十分ある。

 

自分だったら、もしももしも、その機会があったら「俺、ホモなんだよ」とヘラヘラって言いそうだ。「ゲイ」ん?なんか違う、と思ってしまう。ましてや、自分はLGBTではない。

 

先輩はどうしてA君に自分がLGBTだと教えたんだろう。単に、いつもオープンに誰にでも身近な人には隠さず話すようにしている、そういうタイプの青年なのかもしれない。

 

しかし、ズレたまま自分は考える。先輩はA君のことが好きなのではないだろうか。

 

もし、そうで、いつか先輩に好きだと告げられたら、A君はどう思うのだろう。

 

もっさりしてるけど、服装にちょっとセンスのあるA君。もしや、とも思うけど、やっぱり総合的に「中年ホモ」の目から見て、彼は「LGBT」ではない。

 

優しいA君、さあ、どうする? 

 

どんなに思われても、どんなに思いやりを集めても、君は先輩の気持ちには決して応えられない。

 

もしももしも、将来、男に好かれるということがあったら、A君にも辛いとか、そんな気持ちになって欲しい、なんて思う。