中年独りもん

会社員の男性同性愛者。

Baby Baby

朝、会社のエレベーターで、前に少しの間同じフロアーで仕事をしていたことがある同僚と一緒になった。

 

自分より結構年下(子持ち)だけど、他所から来た者同士のせいか、それとも単にお互いそういう性格なのか、顔を合わせると変な気を遣わずにくだらない話をする。

 

どうでもいことを言い合いながら耳からイヤホンを取っていたら、「ジャスティンですか?」と軽蔑っぽく、ふざけた口調で言われた。

 

会社なんかの社交会話で、どんな音楽聴くんですか?と聞かれたら、自分はいつも「ジャスティン・ビーバーとか…」と答えることにしている。

 

「こんなおっさんがジャスティン…。」とビミョーな空気になりつつ、相手は必ずちょっとウケてくれて、まあ、自分の持ちネタみたいなもんです。

 

世界ではずっとトップを走っているジャスティンだけど、自分の周りでは不思議と自分もファンだ、という人が老若男女いたためしがなく、会話が続かず面倒くさくない。

 

ジャスティンと聞くと、皆「ベイビー、ベイビー」と歌い始めるから、この音楽社交会話をする度にじわじわっと自分も楽しくなる。

 

今回は「あんまり、ジャスティンのファンだって人に言わない方がいいですよ」と同僚に注意されてしまった。

 

彼の頭の中のジャスティンは、女の子みたいだった子供のジャスティンなのか、はたまた、無事にすっかり男くさい大人になったクスリとタトゥーのイメージのジャスティンなのか。

 

なぜ言わない方がいいのか。可笑しい。エレベーターの中、二人で謎の大笑いした。

 

ジャスティン・ビーバーをよく聴く、というのは(自分なりのお馬鹿な)大嘘なんだけど、実はジャスティンの歌声はかなり好きで、本当に歌がうまいと思う。

 

何か最新の技術を使って音程とか調整しているんじゃないかと思うほど(本当に調整しているのかも)完璧な歌いっぷりに、脳内になんか変な物資が出てくるような気持ちよさを感じる。

 

ただ、好きな音楽ではないから各曲一回くらいしか聴いたことがなく、あとは店内とかで流れているのが時々耳に入ってくるだけだ。(だから全然よく聴いてるわけではない)

 

秋の楽しいはずの連休は、スーパーに食料品を買い出しに行っただけで終わってしまった。

 

部屋でアプリを開くと、お仲間たちがズラッと出てきた。隣の建物にいるんじゃないかと、ぎょっとするほど近くにもいる。

 

メッセージをくれるありがたい人もいるけど、皆せっかちだな、自分がグスなのかな、うまくいかない。

 

スマホYou Tubeのおすすめが出てきて、ジャスティンの新曲「Lonely」を1回だけ聴いた。ぐっと来た。

 

若くスターになって全てを手に入れたけど、電話をかける相手が一人もいない、ロンリーだと、1ミリも外れないキーで歌っている。

 

スターの孤独は、自分には遠くの縁のない話なんだけど、歌の中のいくつかの言葉は、心の真ん中に突き刺さった気がした。

 

エレベーターの中で同僚に、ジャスティンの音程が完璧だからぐっと来るのかな、とか話をしたいな、とちょっと思った。

 

冗談ぽく言おうかな、一瞬考えたけど、やっぱり話さなかった。