たいてい、乱暴者のアメリカ男役のジーン・ハックマンと、きれいな顔のアル・パチーノの70年代ロードムービー、大好きな映画だ。何回見ただろう。
ファイトクラブのブラピは最高だ!とか小津安二郎の映画はいい!とか、古くても今も見続けられ、語られている映画もあるのに、「スケアクロウ」は、忘れられてしまった映画みたいで、ファンとして寂しく思ってる。
今は二人共おじいさんになってしまったけど、「スケアクロウ」の中で、ジーン・ハックマンもアル・パチーノも、一番いい感じの歳の頃合いだ。
ジーン・ハックマンは、クルクルのもじゃもじゃ頭で、この頃からもうやけに額が広くて辮髪みたいだし、白人男性の美の基準に当てはまるのは、比較的身長が高いことくらいなんだけど、男100%なところが魅力的だ。
アル・パチーノは中年期からカサカサしわしわな感じになっちゃったけど、まだ大丈夫で、体は小さいけど、映画はクローズアップしてなんぼ、感心するほど、顔に美しさがある。
傷害で入ってた刑務所から出て来たジーン・ハックマンと、妻子を捨てて外国に逃げてたアル・パチーノが、袖触れあって出会い、人生をやり直そうと、広いアメリカ、北部の街をいっしょに目指し、旅をする。
喧嘩っぱやい人嫌いのクズと、冗談がうまいだけの心が弱いクズ、二人のクズが映画の中で、行動を共にし、気持ちを近づけていく様にぐっと来る。
映画の半ば、後半に向かうところで、短気でどうしようもない、ジーン・ハックマンが食堂でストリップをするシーンがある。
一枚、一枚と厚着の身体から服をセクシーダンサーのように脱ぎ捨てていく。変なお決まりのストリップミュージックを聴きながら、自分は映画を見ていて、初めて泣いた。
映画を見て泣いたのはこれっきり、後にも先にもない。
クズが一つだけ持っていた、温かい、いいものが、もう一人のクズの固い心に届いたことがわかるジーン・ハックマンのストリップシーン。
自分はどうしてだか、この映画のような、ホワイトトラッシュの映画に弱くて、一番入り込みやすい。
でも、キラキラ感ゼロのくすんだ世界がゲンナリして苦手だという人が多いんだろうと思う。残念だ。
映画中盤に置かれた、ジーン・ハックマンのストリップ、自分にとって忘れることがない、一番の映画のクライマックスシーンだ。